発達が気になる子どもたちの日常と臨床応用

日々の生活にある学びと明日から実践できる療育支援のヒント

「やる気」がないのではなく、「報酬予測」が小さく、「報酬遅延」に耐えられないのです。

あるあるな行動なのかな??

 

ADHD傾向のあるTWINS弟さんのお話です。

 

ADHD「Triple pathway model」で考えると…

抑制機能(実行機能)の障害(Inhibitory)、報酬予測/遅延の障害(Delay aversion)、時間処理の障害(Temporal processing)といったADHDの3つの特性を表します。

 

 

で…皆さんよく経験されると思うのですが、

「宿題終わったらTV/ゲームをしようね、おやつ食べようね」なんて声掛けしたり、スケジュールを立てて本人に伝えますよね?

 

しかしながら、

抑制機能(実行機能)により…

  • 宿題をしようとするが、他のプリントや教科書等の他の刺激/情報に反応してしまい、遊び続けてしまう。
  • で…「あーだ、こーだ」している内に自分のプリントや鉛筆を無くす笑。

時間処理機能により…

  • 予定していた課題や宿題が終わらず、時間を超過したりと…計画的に進めることが難しくなる。
  • そもそも自分の思う予測時間と実行時間との乖離が大きく、時間感覚もわかりにくいため、予定通りに進まない。

で、たぶんウチの最大の難関である報酬予測/遅延により…

  • 本当は、数十分で終わるはずだった課題/宿題が小1時間くらいかかってしまう。
  • まさに目先の欲求(即時報酬)である「とりあえず、目の前にあった学校の広報誌/借りてきた図書室の本」などを選択してしまう…。遅延報酬割引の度合いが強いってやつです。
  • 報酬予測/価値を小さく見積もる傾向に加えて、過去の経験からなのか「宿題に時間がかかってゲームの時間が少なくなる/今はおもしろい・見たいTVをやっていない/好きなおやつじゃない、あまりおやつの気分じゃない」とか色々と考えてしまうみたいです笑。
  • そうなると、「報酬の強化」低下し、「報酬をもらう」という効果が薄れたり、持続しなくなってしまい、さらに「先延ばし」という代替行動に発展していく…。

 

どうしましょうかね~。色々と試行錯誤している感じです。

抑制機能(実行機能)については…

とりあえず、学校から帰ってきたらすぐに宿題をするなんて、無理な話ですので、先ずは目先の即時報酬で心を充足してもらう笑(時間は決めてもらいます)。

後は、「いつ・なにを・どれくらい」するのか計画してもらったり、ルーティン化していくしかないとこですね。

 

時間処理機能については…

「報酬」との関連性も強いですが、時間/スケジュールを視覚化して伝えるしかないですね。タイマーとかもそうですけど、「60分」という時間をどのように有効活用するかで自分の前後の行動/報酬は大きく変わり得る…みたいなことは、グラフみたいに割合を示して「20分で終わったら、後40分も遊べるやん」と考えてもらう。

 

報酬予測/遅延については…

抑制機能(実行機能)とも関連しますが、「いつ・なにを・どれくらい」するのか計画して、「困難な課題/努力を要すこと」分割/分散してもらう…。

分割/分散により「即時報酬」という価値観に少し近づきます。

あと、報酬はある程度「自分」で決めること。

加えて、今の時報(目の前にあった学校の広報誌/借りてきた図書室の本)よりも魅力的な報酬(遅延報酬)があることを具体的に見せる。

言葉で言われる/伝えるよりも視覚的且つ具体的に見せた方が良いってことです。

 

TVであれば、ウチは野球好きなので番組欄を見せて

プロ野球中継は18時からあるよ」とかね笑。

おやつもご褒美(報酬)用にいくつかストックしているので、「終わったら何を食べる?」と聞いておくとか。

ゲームはわかりやすく、「終わったら何時まではできる」とか「終わった人から先に始める」とか、言語のみでもわかりやすい反応します笑。

 

とは言え、「困難な課題/努力を要すこと」にチャレンジしないといけないことに間違いありませんので、そう簡単には上手くいかないものです。

 

遅延報酬を魅力的にするよりも、小さな報酬でも本人が決めたもので、行動やスケジュールがルーティン化されて、好ましい行動を増やす/維持するために有効な手続きが繰り返される強化学習に繋げるのが一番大事な気もしますね。